鎌田哲雄の同友会形成コラム「陶冶(とうや)」

 

2020年度 バックナンバー

VOL.173 新型コロナウィルスの3つの顔(病気・恐怖・差別)

新型コロナウィルスによる感染症は、世界中で感染の拡大が続いている状況です。

日本赤十字社の啓発動画を見ましたが、本当にこのとおりだと思いましたのでご紹介させていただきます。

ウィルスの次にやってくるもの、ウィルスから身を守るためには?きちんと手を洗うだけで、感染する確率はぐんと下がる。でも、心の中にひそんでいて、流れていかないものがある。

そいつは、暗いニュースや間違った情報をたくさん食べてどんどん育って、ささやく。先の見えない状況を「もうみんな助からない」と。誰にもまだ、分からないことを「誰かが隠しているのだ」と。

そいつは人から人へと広まっていく。「あの人が病気になったのは、誰のせい?」、「ウィルスが広まったのは、あいつのせいだ!」

そいつはまわりに攻撃をはじめる。人と人が傷つけあい、分断が始まる。

そいつは脅かす。「もしも感染していたらどうする?」「あんな風に言われたらどうする?」

みんな熱があっても隠すようになる。具合が悪くても、元気なふりをするようになる。鏡を見ると、そこにもうあなたはいない。

そいつの名前は恐怖。ウィルスの次にやってくるもの。わたしたちが恐怖に飲み込まれる前にできることは恐怖に餌を与えない。

ときにはパソコンやスマホを消して暗いニュースばかりを見過ぎるのはやめよう。不確かな情報をうのみにしないで、立ち止まって考えよう。誰にもまだ分からないことは、誰にもまだ分からないことでしかない。

そのままを受け止めよう。恐怖から距離をとる。非難や差別の根っこに、自分の過剰な防衛本能があることに気づこう。恐怖が苦手なものは笑顔と日常だ。

家族や友人と電話して笑おう、いつものようにきちんと食べて眠ろう、恐怖は逃げていくだろう。

恐怖は誰の心の中にもいる。だから励ましあい応援しあおう。人は団結すれば恐怖よりも強く賢い。恐怖に振り回されずに、正しく知り、正しく恐れて、今日、わたしたちにできることを、それぞれの場所で。

VOL.172 日本の労働市場の特殊性

日本の労働市場には特殊性があります。

日本には、「新卒(就社)市場」と「中途(就職)市場」がありますが、これは世界的に見ると、必ずしも普通ではありません。

アメリカやヨーロッパでは、高校生や大学生のほぼ全員が一斉に、卒業と同時に職に就くことはありません。だから、若年層の失業率は高くなります。

アメリカやヨーロッパの若者は、社会と教育機関を行き来しながら、あるいは職場や職業を複数経験しながら、ある程度の時間をかけて、適職に就くというイメージです。

日本では明らかに良い点は、若年失業率が低いことです。卒業直後の雇用が安定しています。

しかし反面でそれは、教育課程の終盤から職業人生の入口に立つこととなり、自分の職業に関する希望や適性もよくわからないまま、半ば強制的に会社を選ばされ、結果的にミスマッチを起こす可能性が高いシステムでもあります。

特定の職業の勉強をして、その成績などに基づいて就職する高校生や大学生は少数派です。企業も中途採用のように業務実績を問うことができないため、基本的な人柄や大学のランキングなどによる、"潜在的な期待値"によって選別します。

仕事内容が明確な求人ではないため、学生も仕事内容ではなく企業の大きさや知名度によって選びます。だから「就社」活動になってしまいます。

どの会社で、どのような仕事をするのか、という具体的なイメージを描ける学生は、ほとんどいません。やはり「就職」とは、「職業に就く」のですから、あこがれの職業であろうとなかろうと、自分に合った職業を見つけることが、社会人としてとても重要なことだと思います。

そして、働き始めると、仕事ができるということが、当然求められるところですが、それだけでいいかというと、そうではありません。仕事が上手ならばいい、腕さえよければ人柄は二の次でもということではないのであって、社会人として、やはり態度、人柄ともに好ましい人であることが大切になってくると思う。

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