鎌田哲雄の同友会形成コラム「陶冶(とうや)」

 

2011年度 バックナンバー

VOL.88

2月19日に愛媛大学グリーンホールで“マッキー”こと愛媛大学教育学部教授の山本万喜雄先生の“最後の授業”がありました。

 

受講した事務局のYさんに聞くと300名を超える全国からの参加者で教室は立錐の余地のないマッキーファンで埋め尽くされたとのこと。

 

山本先生との出会いは、1988年11月の愛媛同友会が設営した第四回社員教育活動全国研修交流会にさかのぼります。会員のTさんと全国交流会の講演内容を吟味するために五十崎町で開催された地域住民との講演会に参加したのが最初でした。

 

社員教育活動全国研修交流会では、「豊かな人間とは」をテーマに講演。その時の私のノートには、『とかく中小企業は、焦りから性急な結論を求めがちになるが、同友会理念に裏打ちされた教育でないと長続きはしない。経営者も社員も、本物を見分ける力をつけることによって生き残る企業がつくれる。

 

(略)山本先生は実践家だ。どうしたら人は自主性をもって成長していくのか、どんな時に人は意欲を起こすのか。私たちの生き様に迫ってくる内容だった。(略)自らに置き換えて、聞くことも学んだ。』と記しています。

 

あれから、23年経ちましたが、今もって山本先生は家庭・学校・地域・同友会で“共に学び、共に育ち合う意味と価値”について全国を駆け回って問題提起しています。本物の人は、問い続けています。

 

VOL.87 『わたしの原動力』

“人との出会いで、人生が変わる。”私もその言葉の意味を体験したひとりです。私事で恐縮ですが、今から27年前に当時の愛媛同友会設立世話人で亡くなられたWさん、現相談役のFさん、滋賀同友会のHさん、中同協のKさん、香川同友会のMさんとの出会いが私を同友会運動に導きました。

 

自家用車に布団一式だけを積んで、大阪から愛媛に来ました。不安の中、私を支えたのが同友会運動に情熱を傾けている方々でした。『中小企業経営者は、日頃から売上を伸ばすことやお客様の獲得、社員との信頼関係づくりで日々悩んでいる。そういう人を励まし、勇気づけるには、笑顔で明るく接することの出来る事務局長が必要なのです。』と。

 

父親が経営者ということもあり、それまでの私の経営者像は、“常に前向きで、自信があり、行動力がある”という思いでしたが、その時に、言葉の意味する“経営者の悩みの背景”に気づかされもしました。

 

愛媛に来て一年後、同友会運動を27年続ける原動力となったのが、Oさんとの出会いです。初対面でしたが、意気投合してお互いの悩みや夢を深夜まで語り合ったのが昨日のように甦ります。

 

詩人ルイ・アラゴンの『学ぶとは、誠実を胸に刻むこと。教えるとは、希望を共に語ること。』を追い求める価値ある人生を歩みたいと思う今日この頃です。

 

VOL.86

波乱に富んだ2011年から2012年へ。昨年3月11日、東北地方太平洋沖を震源として起きた大地震とその後の太平洋側を襲った大津波は、街を壊滅させるなど計り知れない被害をもたらしました。

 

さらに、福島第一原子力発電所の爆発事故と放射能漏れ、被災した工場の操業停止、電力不足からの首都圏計画停電と、まさに未曾有の国難が襲いました。

 

いわゆる3.11はたくさんのドラマと教訓をつくりました。私の身にも困難が襲いかかりましたが、被災者同様に周囲の物心両面の温かな励ましで勇気と元気をもらっています。

 

昨年末に私のもとに届いたA会員からの励ましの手紙の一節に詩人ゲーテの言葉が引用されていました。『自分の身に起こったことは、それが可能なら運命を変えるために行動せよ。それが不可能なら進んで運命を引き受けよ。運命や不幸は人間を精神的に成長させる学校だ』こうありたいものです。

 

私たちを取り巻く環境は予断を許しません。家族を含め個々の組織を守ることはリーダーの社会的使命です。他に転嫁しても解決になりません。ここは、腹をすえて情勢認識を行うことです。2012年を希望の年とするためにも、仲間と連帯して『変革』を合言葉に元気で楽しい組織をつくりあげる年としてまいりましょう。

 

VOL.85

手帳を見て驚いたのですが、早いもので12月。みなさんにとって今年はどのような年でしたか?

 

私にとって今年は、『ピンチはチャンス』という言葉で表現できる人生の節目となる出来事があった年でした。七年間勤務していた池田さんの寿退職、新たな仲間としての大北さんの入局。愛媛同友会としての新ビジョン・方針の策定。そして、自身の健康問題等々。

 

新方針といえば、赤穂浪士の討ち入りに日にあたる12月14日に、愛媛同友会としては、初めてとなる経営フォーラムの開催に挑戦します。その目的は、『二十一世紀型中小企業=人を生かす経営』を会内外に広げることです。

 

『人を生かす経営』とは、労使見解の精神を発揮した経営指針を確立し、社員教育を怠らず、求人を行うという経営を行うことです。多くの皆さんの参加を期待しています。

 

さて、今年の目標や計画の進捗状況はいかがですか?私の今年の目標は『挑戦なくして成長なし』です。因みに、私の進捗状況は多くの仲間の支えのお陰で光が見え始めたところです。

 

あと一ヶ月、目的・目標に立ち返ると同時に現状認識を行い、この一年を良い年とにできるように挑戦しつ続けたいと思います。

 

この一年共に学び、共に励まし合った仲間の皆さんに、詩人ルイ・アラゴンの詩の一節をお贈りします。『学ぶとは、誠実を胸に刻むこと。教えるとは、希望を共に語りあうこと』来年もよろしくお願い申し上げます。

 

VOL.84

気がつけば十月もなかば。それほどに今年は暑い日が続きました。まるで九月という月がなかったという感じです。経営者や幹部の皆様は、知らず知らずの間に体を酷使することになりますので、心身ともに気をつけていただければと思います。

 

ところで、皆さん“人生脚本”を聞いた事ありませんか?人生をドラマであると考えると、人はみな人生ドラマの主人公です。ドラマであるとすると、何か脚本があって、それぞれの役割を演じているかも知れません。ここで、主人公は脚本のことを意識しないで、その場その場で臨機応変に対処しているようでも、同じような状況では同じような行動パターンをとってしまう。これが“人生脚本”という考え方です。

 

この人生脚本は幼少年期に身近な人の接触の中で自身を守るために獲得した生活の知恵や人生の決断の連続の結果です。この人生脚本に問題が起こると自分の描いた結果にはなりません。したがって、まず脚本をもっている人は、自分で、その脚本の問題に気づき、それを新しい脚本に書き直すという作業が必要です。

 

秋の夜長は、私にとっての人生54年の人生脚本の見直しと新たな人生脚本の作成に充てたいと思います。ところで皆さんの人生脚本は・・・・。

 

VOL.83 『同友会大学とは?』

9月22日から第九期同友会大学が開講しました。今年度から前期と後期の二期制に挑戦した甲斐があり、合わせて二十六社七十四名の経営者や社員が受講しています。同友会大学では愛媛同友会会員をはじめ12人の講師から、私たちを取り巻く現実と理想、そして企業経営の真髄を講師の生き方を通して学び合っています。

 

愛媛同友会の同友会大学の目的は「仕事の取り組み方や職場のあり方、そして自らの生き方を科学的に問い、中小企業で働く意義と人生とのかかわりを理解し、人間としての誇りにかけて自ら成長していく力を育てることにあります。」

 

同友会大学の精神は、書籍「共に育つパートⅠ」に収蔵されている『やまびこ学校』という作文集を出した無着成恭先生の教え子である佐藤藤三郎さんの中学校卒業式の答辞にあらわされています。

 

それは『いつも力を合わせて行こう』、『かげでこそこそしないで行こう』、『働くことが一番好きになろう』、『なんでもなぜ?と考えろ』、『いつでも、もっといい方法はないか探せ』

 

この答辞の意味は『自立して、世の中に旅立ちする力を養う』こと。それともう一つは、『自立には、仲間とのふれ合いが必要』ということだと思います。同友会大学が開講される時に、『自立しているのか?』常にこの言葉がよみがえります。

 

VOL.82

今年もいろんな意味を持つ8月15日がやってきました。今年は、全国戦没者追悼式をテレビで観ました。追悼式は、厳粛で静かに戦没者を追悼し、平和を祈念する同時に、戦争の痛ましさ、歴史への責任と生きることの重みを考える内容でした。

 

しかし、戦後66年が経つと、もはやこの日の持つ意味が大いに風化していることを感じます。数年前の世論調査では、1980年代生まれの若者たちには、日本がアメリカと戦争をしたことすら知らない者もいるとのこと。現代史の勉強がおろそかになっていることを痛感します。

 

今日の繁栄は、半世紀にわたる平和の維持なくしてはありえなかったでしょう。時代を担う若者にこそ、日本国憲法のもと平和で安全な社会を希求し、その構築に努めてきた戦後の歴史を学んで欲しいと思います。言うまでもなく、私たち中小企業は、平和で安定的な日本社会の発展に寄与してきました。

 

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言われるように、まずは、中小企業家が自社の社員教育で“世界の動きと日本の関係”や“世界と自社の位置”そして “人間としての生き方”を語れる人になることが肝要だと思います。“隗より始めよ”、自戒を込めて心がけたいものです。

 

VOL.81

あの感動と寝不足が続いたワールドカップ女子大会も『なでしこジャパン』の優勝で終わりました。ここのところの日本のスポーツでは、「世界一位の快挙!」といったニュースが久しくなかった気がします。

 

東日本大震災後は、原発に節電、と暗いニュースがいっぱいで、先行きが見えない感がありました。そんなムードを吹き飛ばすような、『なでしこジャパン』の優勝!という明るいニュース。FIFAランク4位からの優勝です。あきらめずに全員一丸となってやる、日頃の努力の成果が優勝という二文字を獲得することにつながりました。

 

『なでしこジャパン』からは大きな感動を、そして勇気をもらいました。そして、次は私たちの出番です。日々の生活や仕事は、決して楽しいものばかりではありません。しかし、その先にはきっと良いことが待っている。そんな当たり前のことを、『なでしこジャパン』は思い出させてくれました。

 

スポーツも経営も、常に常勝というわけにはいきません。長い苦難の時期をいかに体質強化に努めるかが、次にくるチャンスを生かす秘訣でしょう。そしてもう一つは、目標に向かって、必ず達成するという強い意志が大切だと感じた今年の夏でした。

 

VOL.80

今年の六月は、東温支部、松山三支部、そして四国中央支部で中小企業基本振興条例をテーマにした支部総会を開催したのが特徴であると同時に、いよいよ愛媛でも足並みがそろってきたと感じました。

 

講師には、町として全国で初めて条例を制定した別海町から別海地区会幹事長の山口寿氏・富田屋(株)社長。条例の基本理念に「域内循環」「域外貨獲得」「域内連携」の3つの柱から成り立つ『産消協働』を掲げ、円卓会議ネットワークシステムで運用を図っている釧路市からは、釧路市産業振興部次長の高木亨氏。

 

条例制定にあたっては、同友会役員と事務局長、そして行政機関の三位一体で連携することが鍵であることを米木稔・釧根事務所事務局長と二人の報告者の関係から感じました。

 

条例制定は経営者の真しな企業づくりが出発点であり、行政機関や商工団体の人たちに呼び掛ける地味な行動から始めること。それらがやがて大きなうねりとなり、同友会が地域経済再生の主役となっていく。会員企業も地域になくてはならない存在感ある企業に発展していく。

 

条例制定は同友会運動で培った新たな中小企業を定義づける運動であるとも感じました。愛媛もこの歴史的な中小企業運動に本格的に参加する資格は十分あると感じた六月でした。

 

VOL.79

四月の県総会に始まり、5月6月は各支部総会が花盛りです。4月28日の第27回総会では、一年間の成果を確かめ『全社一丸・同友会一丸で企業の総合的実践に取り組みこの激動の一年を突破しよう!』の2011年度スローガンを含め今年度方針を決めた総会でした。

 

今年度の特徴のひとつは、『総合的な人づくりや企業づくり』を全面に押し出した活動を展開して、なくてはならない経営者団体となるために経営者や社員にとって、未来をひらく共学・共育の場とすることを謳ったことです。

 

具体的には、経営フォーラムの開催や共同求人活動を新たに取り組み、経営指針活動と社員教育活動等の専門委員会と例会やグループ会等の支部活動と連携して“より存在感のある同友会”をつくることです。

 

二つめの特徴は、方針や活動を実現するために理事・幹事の役員を広げたことです。役員は同友会の顔でもあります。

 

とりわけ同友会の場合は、役員が同友会理念をどう企業づくりで実践しているかが問われ、会の対外活的評価にもつながります。新に会の負託を受けた新役員の皆さんの活躍を期待しています。

 

VOL.78

未曾有の巨大地震と津波に加え福島の原発事故という三重苦を東北・関東地域にもたらした東日本大震災が発生して一か月。過去に経験したことのない大惨事になっています。

 

地震と津波は「天災」であり、人間社会として対峙する必要があります。しかし、原発事故による被害は「人災」であり、安全対策がどうであったか、事故後の対応がどうであったか、総括される必要があります。

 

今も、依然として多くの行方不明者がいることに心が痛みます。避難生活を余儀なくされた人たちが早く立ち直られることを祈る日々です。そんな中で、被災地で懸命な復興作業に携わる国内外の多くの人たちに感謝と敬意を表すると同時に、人間が培ってきた『連帯』することの力強さを感じます。

 

14世紀イタリアに興り、16世紀までに全欧州に展開した学問上・芸術上の革新運動である『ルネサンス』。『ルネサンス』は、『再生』や『復興』を意味します。ダ・ビンチ、ミケランジェロやラファエロが活躍した文芸復興の輝かしさとあいまって、人をひきつけてやまない言葉です。

 

未曾有の危機に立ち向かい『再生』と『復興』のために、『連帯』してたたかう大勢の人々みんなが21世紀のダ・ビンチやミケランジェロ、ラファエロだ!と思う。

 

VOL.77

3月11日午後、東北地方太平洋沖を震源として起きた大地震とその後の太平洋側を襲った大津波は、街を壊滅させるなど計り知れない被害をもたらしています。被災された皆さんとその家族、関係者の悲しみや不安に胸を痛めます。一人でも多くの方々がご無事でありますようにと祈るのみです。

 

さらに、福島第一原子力発電所の爆発事故と放射能漏れ、被災した工場の操業停止、電力不足からの首都圏計画停電と、まさに未曾有の国難です。被災地への苦境は続き、生活への不安が募ります。

 

被災者の方々を支えるために中同協では「東日本大震災復興対策本部」を3月14日に設置。愛媛同友会でも2月22日の理事会で被災地が必要とするものを明確にして緊急かつ長期にわたる復旧・復興支援を行う事を決め、マスクやウエットティシュの物資発送や義援金に取り組んでいます。

 

大震災も原発事故も、もうこりごりです。しっかり備えをして、困っている人を少しでも助けたい、支えようという気持ちは国内外に溢れています。国難にどう立ち向かうか。市民である経営者・社員が地域と共に結び合い、足元の地域や企業づくりを通して安心・安全かつ『地域に働き・暮らし・人間らしく生きる社会』をすすめてまいりましょう。

 

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