鎌田哲雄の同友会形成コラム「陶冶(とうや)」

 

2019年度 バックナンバー

VOL.165 常識を問い直す

明らかに社会的・倫理的に許されないことだとわかっていても“お願いだ”と言われて黙っていることにした。しかし結局、表に出てしまい皆が処分を科せられることになってしまった、ということが現実に起きています。

しかし、そうなってから“だからあのときちゃんとそう言っておいたのに”と言っても、一緒に隠した罪から逃れることはできません。知ってしまったらどうするか、大変厳しいことですが、腹をくくって自分自身の考えを確立し、決断しておかなければなりません。

不祥事の際には、トップは知らず現場の判断だった、という釈明がよく行われます。あのような不祥事は特殊な例だから、とは言っていられません。多くの人が“まさか”とか“うちにかぎって”と思っています。

しかし突然、自分たちが渦中の人になってしまうのです。誰にでも迷いは常にあります。

社会的・倫理的に反する行為が明らかになる前に必ずそのもとになるシグナルが出ているはずです。

もしあなたの周りでそのような兆候や噂、疑問があれば、あなたは注意深く行動しなければなりません。兆候や噂、疑問を謙虚に受け止め、偏見なく事実を集め、現実を正しく認識することです。

仕事の方針、判断が誤った方向に行きそうなとき、あなたはどのように行動すればよいでしょうか。誤った方向に対し、反対しようとする人が誰なのか、その人は人の言いなりではなく、何によって行動しているのかを見ておくことが必要です。

そして、あなたの考えと近い人と新しい友人を作る気持ちでコミュニケーションをとりましょう。部下についても同じです。

きちんと筋の通っている人の意見には、耳を傾けるようにしましょう。多くの人と語り合い、あなたの考えを確立することが大切です。

噂や兆候が現実になってからでは遅いのです。

常識というモノサシがズレていないか、常識的に考え、行動するという意志が弱くなっていないかなど、当たり前のことを総点検しなければならないのです。

VOL.164 誰もがフリーランスになり得る時代

今や日本のあちらこちらで、人生100年時代と言われます。

終身雇用はもはや終身では無く、政府が今年5月に出した成長戦略の実行計画の骨子では、企業が65歳から70歳までの就労機会確保を促すために、定年廃止や定年延長と並んで「個人とのフリーランス契約への資金提供」という選択肢が入りました。

定年後のセカンドキャリアでは、誰もが特定の組織に属さない働き方、つまりフリーランスになり得る可能性があります。定年を待たずとも、価値観の多様性やキャリア自立志向の高まりを受けて、副業を含むフリーランスのワークスタイルを志す人がミレニアル世代を中心に増えています。

スマートフォン1台あればどこでも働けるため、独立や開業の敷居やコストは急速に下がりました。

厚生労働省のモデル就業規則の改定により2018年は副業元年と言われ、今年5月の日本経済新聞調査では、アンケートに回答した企業の5割が副業を認めるようになりました。

会社員と比較して脆弱な社会保障や、契約トラブルといったフリーランスの課題を解決すべく厚生労働省や公正取引委員会が議論を進めていたり、賠償責任保険や所得補償制度、健康診断の優待等の福利厚生を提供するフリーランス協会のような非営利団体が出てきていることもあり、今後徐々にフリーランスを取り巻く環境は整備され、人口も増加していくと考えられます。

働き手側の環境が整備されている一方で、副業人材を含むフリーランスの受け皿となる仕事はまだ全国的に見ると十分ではありません。

国内で、自社の雇用関係にある者以外の外部人材を活用している企業はまだ2割以下です。

そもそも外部人材を活用できるという発想がない経営者が大半であるし、個人への発注をリスクと捉えたり、人材管理の複雑性が増すのではないかと腰が重たく感じたりする企業も多い。

しかし、個人と企業が様々な接点で繋がり、組織の壁が融解していく社会では、人材獲得の方法も多様化して行かざるを得ません。

VOL.163 「支える人」を増やす必要性

高齢化は要するに、社会を「支える」人が相対的に減り、「支えられる」人が増える事を意味します。

高齢者向けの公的な社会保障給付を削減しても、「支えられる」人の人数がそのままであれば、私的な扶養コストが増えるだけで問題解決されません。

高齢化の圧力に対抗する最も有効な手段は「支える」人を増やし、「支えられる」人を減らすことです。

両者のバランスが改善しない限り、私たちは、自分たちの幸せを維持するためには将来世代に残すべき富に手をつけるしかありません。

これは、社会の持続可能性を損なう選択です。高齢者の就業促進は、社会保障や財政の収支改善のために必要というより、社会全体の持続可能性を高めるためにこそ必要です。

政府は、「一億総活躍」というスローガンを掲げています。

高齢化の圧力に屈しないためには、働ける人はできるだけ「支える」側にとどまっていただこう、というこの考え方は決して間違っていません。

ところが政府から提案されている改革案は、今のところ繰り下げ支給の年齢上限の70歳超への引き上げだけです。

一方、就業促進に最も直接的に働きかける、支給開始年齢の引き上げは封印されています。また、就業にブレーキをかける在職老齢年金の廃止についても、政府はかなり消極的です。

このうち、支給開始年齢の引き上げは政治的な争点になるテーマであり、他の先進国でもかなり長い時間をかけて解決されてきました。

日本の支給開始年齢は他の先進国より若いが、政府が引き上げに慎重になるのも無理はありません。

マクロ経済スライドの仕組みがあるから、支給開始年齢を引き上げても年金財政には影響しないという理屈も良く持ち出されます。この理屈そのものは正しい。

しかし、高齢者就業、さらに言えばマクロ経済全体の供給能力という観点、要するに社会の支え手をどう増やすかという観点から年金制度をどう設計するか、という重要な議論までもが脇に追いやられています。

VOL.162 「また会いたい」社員であふれている会社とは

青森県に恐山という供養のお寺があります。

そこでは、亡くなられた方のお名前と命日そして一言メッセージを書いた石を持ち込んで、その石を寺の境内に置いて帰ってくるというのが供養の方法の一つだそうです。

その一言メッセージにはどんな言葉が書かれていることが多いと思いますか。

私はこの話を聞いてパッと「ありがとう、かな」と思いました。

日本人が一番好きな言葉が「ありがとう」だと聞いたことがありますし、日本人は「感謝する」ことに非常に価値を置くと思っていたからです。

ところがその「ありがとう」という言葉は2番目に多いメッセージだというのです。

では、一番多いメッセージは「また会いたい」なのだそうです。だからこそわざわざ供養に行きます。

「ありがとう」というのは非常に強くて優しい言葉です。

しかしそれ以上にもっと強くてもっと優しい言葉があることを、私はこの時知りました。

仕事をしていて誰かから「ありがとう」と仰っていただけるのは、それこそありがたいことです。

しかし、「またあなたに会いたい」「またあなたと一緒に仕事がしたい」と言われるような仕事をすること。それは「ありがとう」と言われる仕事をするよりも難しいことなのかもしれません。

そんな社員でいっぱいの組織にすること。そうすれば、必然的にその組織は継続するでしょう。

組織の最大の目的は続くことです。でもそれは、私たちが生きる意味を問うとき、もしかしたら目的ではなくて、それすら手段なのかもしれません。

 

人はなぜ生きるのか、人はなぜ働くのか。

人はなぜ組織をつくり、組織に所属するのか。

目は、世界をしっかりと見ることができる。耳は、大切なこと真実なことを聞きとることができる。

口は、見たこと聞いたことを伝えることができる。足は、あなたを待つ人のところへ連れていってくれる。

手は、困っている人を助けることができる。頭は、自分にできることを考えつくことができる。

心は、相手の気持ちを感じとってあげることができる。

VOL.161 自律型社員を育てられるのは、自律型上司

今年小学校に入学する子供たちの約半数は、今この世に存在しない職業に就くそうです。

今、この世にある仕事の48%は、20年以内にAIに置き換わるという試算も出ています。実際、囲碁や将棋の世界では、人間の知能を超えています。こんな時代にあって、パターン化できる情報処理や、複雑な情報を元にした分析業務や理論性が必要な判断業務は、今後、むしろAIに積極的に委ねていくことが促進されていくことになるでしょう。

だからこそ、私たち人間は、これらAIを手段として活用しながら、自らの人生をどのように描いていくのかを自ら意思決定する力が真に問われていくのではないでしょうか。

人は人生や仕事で様々な節目を経験します。そのときに、自分がどう生きたいのか、どこへ向かおうとしているのか、じっくり考えて決断することが大切です。

その決断までAIが代わってやってくれるわけではありません。AIは所詮、ツールであり手段であって、目的をもって、生き、働くのは自分自身です。

上司は、自分のキャリア・デザインだけでなく、部下一人ひとりのキャリア・デザインにも関わる立場にいます。縁あって会社に入り、上司と部下の関係になった分けですから、一人ひとりのデザインしたキャリアが実現できるようサポートする役割でもあります。部下の社員が「この会社に入って良かった、この部署に配属されて良かった」と思えるような組織にしていくことが、上司の役割です。そのために、上司にビジョンとロマンが必要です。すなわち、自分たちも顧客・取引先もWin-Winの関係になれるような組織にするためのビジョンと「ここをこんな会社にしたい、こんな部署にしたい」というロマンを描くこと。上司が「こういうチームにしていこう」という明確な方向性を示さなければ、部下はどっちを向いて仕事をしたらいいかわからなくなります。自律型部下育成の第一歩は、上司自身の自律性から生まれます。

VOL.160 年間何日休む会社となるのか?問い直そう!

休日や年次有給休暇の相談が激増しています。

そもそも我が社の「休み」をどうするか?の議論です。5年以上前までは年間105日、1日8時間、年休は病欠時に少し取得するといった中小企業がスタンダードでした。

ですが、状況は一変しました。最大の要因は深刻な求人難・売り手市場にあります。昨今の求職者はネットの検索でバッサリと休日の少ない会社を排除するようになりました。どんなに良い会社でも休日数が一定レベルでないと戦う土俵にも立てません。

110日未満の休日数の会社は回避される傾向を感じます。また、国民の祝日がドンドン増加する傾向があります。

日本は働き過ぎだなどと騒がれますが、実は世界で最も祝日が多い国です。さらに、2019年4月1日から年次有給休暇の強制付与制度が開始されます。有給休暇付与日数が10日以上の者には、付与日から1年以内に5日間は必ず取得させる義務を使用者が負います。これは管理職であっても、また医師であっても、運送業のドライバーであっても適用は除外されないことがポイントです。違反した場合は罰則として対象労働者一人につき、30万円以下の罰金になります。

政府は安心して働くことのできる職場環境整備で、2020年までの目標として年次有給休暇の取得率70%を目指しています。休日はドンドン増やすことが求められ、パートタイマーを含め年次有給休暇の取得がより一層進みます。

経営者は5年後に年次有給休暇の消化率が70%以上である前提で、人が採用できる初任給に加えて、人が採用できる休日数を設定しなければなりません。人手不足の時代において、時短をせまられ、休日増もせまられます。中小企業にとって極めてハードルの高い難問です。

違う側面からみると生産性の向上も不可欠です。アメリカを100とした場合に建設業で約73%、その他製造業で約48%、卸売・小売で約33%となっています。

この現状をどう考えますか?

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