鎌田哲雄の同友会形成コラム「陶冶(とうや)」

 

2015年度 バックナンバー

VOL.128 同友会で経営者は、憧れの存在になるために何を実践するのか?

そもそも「憧れの存在」の定義とは、何でしょうか?「失敗をオープンにすると同時に失敗を教訓として、誰でもが活用できるように法則化する人」が「憧れの存在」の定義です。ちなみに教訓とは、失敗の本質を見極め、失敗の原理原則を明らかにすること。法則とは、教訓を誰もが理解でき、活用できるようにすることです。

 

「あのような人間(経営者など)になりたい。あのような考え方を持ちたい、あのような発言をしたい、あのような行動をしたい」というような「憧れの存在」(リーダー)になり、希望を語り、「憧れの存在」(リーダー)を会社や社会にたくさんつくるのが、同友会運動です。

 

「憧れの存在」になるためには?経営者(リーダー)としての定石である経営姿勢(言動・行動)を獲得することが大切です。具体的に述べます。

 

A.「経営者としての経営姿勢を確立する」。経営環境に責任転嫁せず、時代の変化に対応して、経営を維持し発展させることを自覚する責任です。経営者の責任とは=成果を生み出すために行動を続けることです。

 

B.「社員やお客様と社会(時代)と対話する」。例えば『先見性』と『行動力』を発揮できる商品・ネットワークづくりのことです。

 

C.「応対辞令を徹底する」=「行動こそ真実」。例えば例会でノートをとることや、御礼状やハガキを作成し、送ることです。依頼する時だけでなく、物事が終わった後が大切であり、そのことを他人は評価します。

 

D.「直言できる人間(的)関係をつくる」。具体的には「やさしい冷たさより厳しいあたたかさ」が大切です。例えば間違っていることに対して見過ごさず、市民的勇気を持って発言、行動することが大切です。相手のことを大切に思うのならば「やさしい冷たさより厳しいあたたかさ」が大事です。このことを繰り返すことで、周りから信頼される人間になっていきます。

 

E.「関係性をつくる」=「何を言うかよりも、誰が言うかが鍵です。=理屈だけではなく、感情の共有が大切」。例えば百回の説教よりも、一緒に食べたり、酒を飲むこと=何を言うかよりも、誰が言うかが信頼関係の尺度の鍵です。「あの人に言われると仕方がない」と言われる人(リーダー)になることが、経営指針を実行するには鍵となります。同時に、雑談できる力。フォーマルとインフォーマルを併せ持つことが大切です。

 

F.「物事の本質をとらえる」=「ひと言で伝える」。例えば物事をひと言で伝える、本質を押さえる訓練が大切です。例会や学習会のまとめ。経営者自ら、社員も訓練する。本質を押さえることができるようになります。

 

「憧れの存在」になるために、経営者(リーダー)として、A~Fを直向きに愚直に実践することです。まさに「凡事徹底」、かの二宮金治郎が言う小さな努力の積み重ねが、やがて大きな収穫や発展に結びつく。「積小為大」の積み重ねが大切です。経営者(リーダー)としての定石を日々の実践を通して獲得して、経営や同友会、社会に見識・見解を持つことで「憧れの存在」になります。

VOL.127 大相撲から目標を見失ず、諦めない強さを学ぶ!

音楽はもとより、芸術等各分野に多大な影響を与えたデヴィット・ボーイの訃報から数日後、朗報が届いた。今年の大相撲初場所で日本出身力士としては2006年初場所の大関栃東(現玉ノ井親方)以来十年ぶり、31歳11ヶ月の琴奨菊は年六場所制となった1958年以降三番目の高齢初優勝となりました。

 

悲願の初優勝を果たした琴奨菊が2011年の秋、大関昇進の伝達式で述べた口上が「万理一空の境地を求めて日々努力、精進いたします」でした。

 

「万理一空」とは、剣豪・宮本武蔵が『五輪書』に書いた言葉。さまざまな意味に取れますが、大関は「どんな努力も目指す先は一つ。目標を見失うことなく努力する」と誓った。

 

この言葉通り、今場所は自分の目指す相撲に徹しました。低く、鋭い立合いで相手の懐に入り、得意のガブリ寄りで、あっという間に土俵際へ追い込む。反撃の隙すら与えない一気呵成の攻めが光りました。

 

心も一直線でした。11日目に横綱・白鵬を圧倒した後、「自分を信じてできた」と語り、残りの土俵も「ぶれたら終わり」と戒めたとのことです。振り返れば、何度もケガに泣き、大関陥落の危機も五度。一方、今場所は「十年ぶりの日本出身力士の優勝か」と、周囲は日増しに騒がしくなり、プレッシャーもありました。しかし、そんな苦闘の過去や重圧をはねのけて、賜杯をつかみました。

 

「必ず成し遂げる」と、心を一つに定め、諦めない強さを、大関に学びます。今年も、はや一ヶ月が経ちましたが一年を相撲の場所に置き換えれば、まだ初日を終えたばかりです。私たちも、自ら掲げたビジョンや目標を見失なわず、一心に突き進みましょう。

VOL.126 世界に同友会運動を広げる原動力の源は、【人を生かす経営】です!

今年の干支は、丙申(ひのえさる)です。丙申の文字の意味は、これまで日の目を見なかったことが形となって現れて来ると言われています。

 

ところで、“猿と人間”の違いについて考えたいと思います。世界的な経済学者であるマルクスとエンゲルスは、人間にとって労働とは何かを、もっと深いところからとらえました。かつて、エンゲルスは「樹上生活をしていた類人猿は平地を直立して歩き始めたことで、自由になった手に次々と新しい技能を獲得し、自然に働きかけて富に変える、その労働のなかで言語が発生し、脳が発達して、人間社会が生まれた」と名著(『猿が人間になるにあたっての労働の役割』)に書きました。

 

同時に、マルクスは、「労働時間の短縮」こそ「人間の能力の全面発達の根本条件だ」と言いました(『資本論』)。労働に当てる時間は、社会の発展と自分の豊かな生活の維持のために避けることのできない活動となりました。

 

食糧確保の狩りの生活を中心とした猿と違って、人間は8時間睡眠をとり、8時間の労働を行い、残りの8時間を自由な時間として使えるからこそ生活を楽しみ、肉体的、精神的発達を通して文化やスポーツ、芸術を生み出しました。

 

さて、みなさんの会社は果たして「人間の能力の全面的発達」のために従業員に自由な時間を保証しうる労働時間・雇用環境をつくれているでしょうか?

 

昨年は、世界的にブラック企業が大きな話題になりました。ブラック企業の定義とは「従業員に違法な働かせ方をする企業」のことです。従業員に違法な働かせ方をする企業は、社員の全面的発達条件を奪う企業なのです。人間と人間社会の発展史に照らしても、ブラック企業の対立軸にある同友会運動が提唱している【人を生かす経営】=【『労使見解』の精神を生かした経営指針を確立し、社員教育を進め、障がいのあるなしに関わらず、求人を行う経営】の実践が求められています。

 

冒頭で述べたように、日の目を見なかった愛媛をはじめ日本全国に【人を生かす経営】を広げ実現させる時です。そして、はたまた同友会運動を世界に広げる、この夢を実現させることを元旦の日に誓った、その時にフっと目が覚めた。今年の初夢です。

VOL.125 世の中の真理をあらわし、人間の生き方を問うものが『経営』

私たちが言葉にする「経済」や「経営」について考えたいと思います。「経済」も「経営」も中国から伝わった言葉です。

 

「経済」とは、経世済民・経国済民と言われ、意味は『世の中や国を経(おさ)め、民を済(すく)う』と言われています。

 

「経営」の「経」とは、お釈迦さんの説法を入滅後に、弟子たちが集まって後世に残すためにインドのサンスクリット語で書き残したものです。それが中国語に翻訳され「修多羅」と言う言葉になりました。サンスクリット語で「スートラ」と言われ「縦糸」の意味があります。昔から現在、そして未来へと縦に貫いて変わらないものを表わす言葉です。これが「経」です。つまり、『永遠に変わらない、過去・現在・未来の普遍的真理』を表しているのです。

 

それに対して、「横糸」は常に移り変わって行くもの、あてにならない仮のものを表わしています。その横糸というのは、私たちが毎日あくせくして求め続けているものなのです。例えば財産や地位、名誉、家柄、権力、容姿、健康など数え上げたらきりがありません。欲しくてたまらないものばかりです。手に入っても地位も名誉も容姿も健康さえもいずれは衰え、色 あせていきます。まさに『諸行無常』です。

 

同友会運動から考えると、お釈迦さんは、科学的手法を用いて「経」をつくったともいえます。弟子たちが人々のあらゆる煩悩(要求)を集約して、お釈迦さんが教訓化し法則化したものが「経」ともいえるのではないでしょうか。まさに科学的手法を取り入れた同友会型企業経営と同じです。その「経」を「営む」のが「経営」です。

 

「経営」とは、本来人間の煩悩(要求)を解決する営み(組織)と言えます。人間が人間らしく生きる、暮らせる世の中をつくるのが、「経済」や「経営」です。いかなる時代、社会になっても本来の「経済」、「経営」の観点で考え、実践することが基本であり原則ではないかと思います。まさに、人間としての生き方が問われているのが「経済」であり「経営」だと思います。

VOL.124 『労使見解の精神』を貫き、『基本的人権』を柱にした第十八回障害者問題全国交流会を開催!

知的障害がある本田知美さんによる力強く、透きとおる「ジュピター」の歌声で始まった第18回障害者問題全国交流会が10月22日・23日に松山市で開催。

 

『共に学び、共に働き、共に暮らす地域を創る!~うちらならやれるけん、ほやけんがんばろうや』をメインテーマに41同友会から目標を超える631名が参加しました。

 

交流会は1985年に産声を上げた愛媛同友会30周年記念行事として開催。折りしも、今年は戦後70年であり、『労使見解の精神』を貫いた『人を生かす経営』の発表から40年を迎え、『基本的人権』を柱にした『障害者問題』に中小企業家同友会全国協議会として本格的に取り組むようになって35年。記憶に新しい東日本大震災から5年目。

 

交流会では、会員、障害者支援(者)機関、市民、行政・教育機関等々、全国から集まった多様な参加者は、『何のために経営をしているのか。』『本当に障害者が育つ経営をしているのか。』『どうすれば障害者問題が理解されるのか。』を問いあった。障害者問題を入り口に『人を生かす経営』の、高み・深みを、参加者が共に学び、大いに語りあう交流会となった。

 

各分科会では、自分達の言葉で話すことを心がけた運営はさわやかであり、心なごみ本質に迫る分科会となった。

 

ご存知の通り、愛媛県の障がい者雇用率は全国ワースト2です。これは、障がいかあっても働きうるのに、働きたくとも働けない人が全国で二番目に多い地域、と言い換えることができます。

 

私たち愛媛同友会がこの課題に挑戦する使命があります。障がいのあるなしに関わらず“働くことを希望する人を採用する”企業をつくる同友会運動が求められることを確かめ合った第18回障害者問題全国交流会となりました。

VOL.123 文化は中小企業の『友人』であり、『人を生かす経営』を『憧れ』の価値観として磨きましょう!

愛媛に住んで30年、1985年9月14日に愛媛同友会を設立して30年、戦後70年の節目の年を迎えました。今回は、中小企業の『友人』である『文化』について考えたいと思います。

 

駒澤大学の吉田敬一先生は、中小企業の経営戦略は文化型産業を軸とした経営ではないかと提起しています。先進国とは、文明型と文化型を兼ね備えた社会であるとも定義しています。

 

因みに文明とは、物質的に生活が豊かな状態であり技術、機械の発達や社会整備などによる経済的、物質的なものを指します。文化とは、宗教、道徳、学問、芸術などの精神的なものを指します。

 

文明産業型とは、物質的で例えば車や飛行機、家電など産業。文化型産業とは、衣食住など地場産業を中心とした精神的産業といえます。

 

大企業は、文明型企業であり、中小企業は、文化型企業に性格づけられます。

 

作家の故司馬遼太郎氏は、文明とは、誰もが参加できる普遍的・合理的なものであり機能的なものです。例えば国家や社会制度。文化とは、特殊性があり多様性のあるものであり、芸術や哲学、民族を指すと話しています。

 

私の体験から、70年代日本は欧米に車やテレビなどの文明型産業を輸出。逆に欧米からは、音楽、映画などの欧米文化が押し寄せ欧米の価値観に憧れを持ちました。

 

これからの中小企業経営の鍵は、『憧れ』を創造することだと思います。世界から憧れられている日本の『文化』を輸出する。その中心が文化型産業である中小企業であり、同友会が提起している『人を生かす経営』の価値観ではないかと思います。

VOL.122 これからの時代を生き抜く鍵は、日本国憲法の精神を生かした企業経営!

戦後71年目を迎えた9月。

改めて、中小企業と平和について考えたいと思います。『平和の中でこそ中小企業は繁栄する』。この教訓は戦前の軍事統制経済から脱却して、自由で民主的な経済の確立を戦後七十年証明しました。まさに、平和は中小企業にとって『最高の友人』です。

 

平和の定義はいくつかありますが、ラテン語でパクスと言う言葉があります。パクスアメリカーナは、軍事・経済の一国による平和と言う意味です。“戦争と戦争の合間”、“次の瞬間に備える”という現実的な認識です。それに対して、ドイツの哲学者カントは『未来永劫、争いがない状態を指す』と定義づけました。理想的で、ハードルが高い定義ですが、日本国憲法の前文に『日本国民は、恒久の平和を念願し(中略)平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』。と記述されています。同じ思想を感じます。

 

平和を保障するのが日本国憲法です。国民主権、平和主義、基本的人権の尊重が憲法の3つの柱です。私たちは、戦後70年の教訓に対して見識、見解を持つことが尊い犠牲の中で培われた日本国民としての使命だと思います。

 

戦後71年以降の中小企業のブランド戦略は、『日本国憲法の精神』を企業経営に生かす事ではないかと思います。戦後70年にわたり、世界から『憧れられる平和な日本』を築いてきた国民と中小企業の価値をしっかりと学び、同友会会員ならば体現者となることが大切ではないかと思う今日です。

VOL.121 『成長なき時代』には『同友会型企業』が主役の時代になる!

戦後70年の経済を読み解く鍵は『成長』です。成長には、二つの山がありました。ひとつは、一九五十年代後半から始まった高度経済成長が70年代には頂点に達しました。そして、二つ目は85年プラザ合意から始まったバブル経済です。はたして『成長する経済』が大切なのかを考えたいと思います。

 

経済を成長させる原動力は、労働人口、工場の設備などの資本の伸び、技術革新の三つですが、人口減少や企業の海外移転がマイナス要因となって日本に右肩上がりの成長はもう期待出来ないと考える方が自然です。

 

しかし経済成長に慣れ親しんだ私たちには、『成長なき時代』への心の準備がまだ出来ていませんから、相変わらず実現できないような成長戦略が作られるし、私たちもそのうち成長軌道に戻るだろうと淡い期待を抱いたりしているのではないでしょうか。

 

まず考えなければいけないことは、これまでの世界経済は、欧米に日本を加えたせいぜい10億人規模のマーケットだったのが、これからはBRICSを中心とした新興国の30億人を加え40億人規模の大マーケットに膨れ上がるという点です。

 

また『成長なき時代』に、資本主義の表舞台とでもいうべき株式市場はどうなるか。『成長なき時代』には、利益の伸びを毎年毎年約束出来るはずがないので、会社の経営目標は、売り上げや利益の伸びよりも持続可能性に重点が移っていくはずです。

 

こうした観点から、株式会社が減ってNGOやNPO組織が増えていくと考える研究者もいます。その一方で、売り上げや利益の伸びだけが株価を決める基準になっている今の株式市場の方が変わる可能性もあります。

 

数字で示される資産価値ではなく、例えば、ブランド、従業員や取引先の質、環境対策や社会的責任に対する取り組みの『優劣』といった目に見えない経営資産の方が重視されるようになるという見方です。まさに私たち『同友会型企業』が評価される市場です。

 

こうした市場の変化の兆しをいち早く掴んでビジネスモデルを考え出せば先行者利益は大きいでしょう。『成長なき時代』には『同友会型企業』が主役の時代となります。今、この瞬間に前向きに取り組み、『人を生かす経営の総合実践』を直向に、伸び伸びと取り組みましょう。『未来』は私たちを必要としています。

VOL.120

多くの尊い命が犠牲となった戦争終了からの70年は、愛媛同友会創立30年の年でもあります。「陶冶」では、平和、経済、文化、人権をテーマについて考えたいと思います。

 

戦後、日本は戦闘で一発も発射せず、ひとりの戦死者もない。海外に対して、政治・軍事的野心を一切もたず、抑制が効いた政策で平和主義を貫き、日本は劇的な経済発展をもたらしましたが、今、大きな曲がり角を迎えています。

 

戦後70年というのは、戦争に敗れて民主主義国として再出発した私たち社会の原点です。経済成長と人権尊重で平和が続き、成功しましたが特に近現代史の歴史に対する見方が曖昧という矛盾が残っています。

 

世界史的に見れば、冷戦時代は経済大国の地位は磐石でしたが、冷戦後は各国のナショナリズムが顕在化しています。世界の変化の中で一国史観ではなく、国際的な世界史の文脈で日本の方向を進むべき道を考える機会ではないでしょうか。

 

中小企業においては、戦後、軍事経済体制から開放され、自らの意思で自由に企業経営を行う立場に立ちました。

 

同友会運動の先輩は、旺盛な『中小企業家魂』をいかんなく発揮し、焼け跡からたくましく立ち上がりました。戦後復興の担い手は、まさに中小企業の存在でした。また、“中小企業は平和な社会でこそ繁栄できる”ことを実感、実証してきたのが戦後七十年の歩みでもあります。

VOL.119 人間としての誇りにかけて自ら成長していく力を育てることが、自由な世界をつくる鍵

経営環境の厳しさが増すほど、経営者が頼りにすべき存在は社員です。同友会会員は、企業にとって有用な人材は社会にとっても有用な人材だということを体験的に理解しています。

 

それでは、社員教育は誰のためにあるのでしょうか?社員教育は会社を維持・発展させるためにだけ存在すると思いがちですが、実は社員一人ひとりのために存在するのです。社員のために存在する教育―その決め手は、社員一人ひとりが「目標を設定する」ことです。

 

『成果は、目標を持った人にのみ獲得できる。そのことが自由自在な世界をつくる』という法則をご存知でしょうか?上司の役割は、部下が目標を設定できるように支援するところにあります。自らが目標を設定できる力を養い、自らの誇りにかけて行動する力を養う支援や環境をつくることが鍵です。

 

そのような人たちを『自立型人間』とも呼んでいます。『自立型人間』を育成することが『自立型企業』への道でもあり、いかなる環境にも対応できる企業づくりの鍵です。

 

愛媛同友会事務局でも『自立型事務局』目指して、五月から六月の二ヶ月間、仕事の取り組み方や進め方、そして自らの生き方を科学的に問い同友会で働く意義と人生とのかかわりを理解し、『人間としての誇りにかけて自ら成長していく力を育てるのが自立型人間の道である』ことを合言葉に事務局研修会を九回シリーズで実施しています。

 

テーマは「仕事・社会・同友会」であり、理論と実技を組み合わせた事務局員の見識と見解を養う研修です。講師は、愛媛新聞編集局副部長の鈴木孝裕氏、愛媛大学教授の和田寿博氏、筆者が務めています。

 

『中小企業が輝く社会は、憧れられる中小企業がたくさん存在する社会』です。それは、『人間としての誇りにかけて生きる社会』でもあります。そのためには、自らの世界観や価値観を押しつけるのではなく、自らの姿勢を見つめ直し、支配し支配される世界ではなく、誰もが自らの誇りと存在価値を認め合い、自由を謳歌できる世界を創ることです。リーダーの存在価値はそういう世界を企業や地域社会で保障し創ることにあります。

VOL.118 三十年間の春の眠り?

愛媛同友会設立30周年記念の第31回総会が4月23日に開催された。30年前、車に布団を積んで初めて松山にやって来た日を昨日のように思い出す。先日、松山城の天守閣を目指して桜満開の登山道を大阪から来た友人達と昇った。

 

私は県外から講演に来ていただいた客人をよくお城へご案内する。天守閣から現代の城下を一望しながら、ふと思う事がある。四百年近くの間、松山の人々の“喜怒哀楽”と共に歩んできたこの城は、今、現代に生きている私たちを眺めながら、何を思うのだろうかと。昔、城をつくり『地域』の繁栄を支えたのは、歴史に名を残していない現代の中小企業家や農民であった。

 

今、現代に生きる“中小企業家”が日本経済・文化の背骨は中小企業であることを明確にした『中小企業憲章』を五年前に制定した。

 

また地域にあっては、経済・文化の発展の担い手として、地域づくりの『経営指針』とも言える『中小企業振興基本条例』を積極的に広げている。『中小企業振興基本条例』は、中小企業自らが光を放ち地域の人々と連帯して『地域』を魅力あるものにする壮大な運動だ。

 

そういえば、愛媛同友会には、四国中央、今治、松山、東温、伊予・松前の五つの支部がある。「新居浜、西条、大洲、八幡浜、西予、宇和島と数えて・・・愛媛には11市九町あり、東温市と松山市に『中小企業振興基本条例』を制定した。愛媛同友会の組織戦略は『中小企業振興基本条例』制定と『支部づくり』がセットか?」と合点がいった時に“春の眠り”から目が覚めた。

VOL.117 「リーダー」について考える  ~『時代と対話する力』と『行動力』を磨くこと~

前回のコラムでは、「リーダー」と「ボス」の違いをテーマに書きました。今回は「リーダー(経営者)の条件」について考えたいと思います。

 

四国中央支部をはじめ山口同友会、香川同友会の例会でそれぞれの事前打合せの担当者の皆さんに筆者が報告するために『参加者に何を伝えたいですか?』との質問をしました。皆さんからは『リーダー(経営者)の責任を伝えて欲しい』とのことでした。私が各支部例会で報告したリーダー(経営者)の責任とは『成果を生み出すために行動を続けること』でした。

 

経営は順風満帆な時だけではないのがリーダー(経営者)の皆さんの実感だと思います。私の友人は、上手くいっていない今でも、“成果を生み出すために行動”を続けています。そういう姿に学ぶべきところがあると思うと同時に、行動を続けるのを止めた時に、リーダーでなくなると思います。それが本当の「リーダー」ではないでしょうか?

 

「リーダー」が持つべき条件のひとつに先見性があります。先を読むことによって、企業の戦略がより効果的に生きてきます。時代を読んだ戦略・戦術は、企業の持続的発展にとって必須であり、「リーダー」の最大の役割・課題といっても過言ではありません。

 

先見性とは優れて個人的なものによるところが大きいものですが、この先見性をひとりの「リーダー」のみに頼るのでは心細いものです。組織においては、構成員の多くが先見性を磨くことが大切です。

 

先見性を養うためには、“社員やお客様”と対話する。そして、『時代と対話する力』と『行動力』を磨くことが「鍵」です。そのためにも、幅広く深い学習と闊達な議論の場が必要です。会員の皆様はお気づきだと思いますが、同友会の例会や委員会が先見性や行動力などを養成する最適な場のひとつでもあります。

 

会員皆さんは、同友会で学んだことを企業・地域に持ち帰り、企業や地域の「リーダー」として活躍されることを願って止みません。


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