鎌田哲雄の同友会形成コラム「陶冶(とうや)」

 

2009年度 バックナンバー

VOL.66

小雨降る京都で第40回中小企業問題全国研究集会(略称・全研)が開催されました。全国行事に参加するといつも感動と勇気をいただきますが、今回の京都全研では一層その感じを強くしました。

 

私は岡田知弘氏(京都大学教授)が報告者の「地域の主役としての中小企業の役割と地方自治体の施策」がテーマの分科会に参加しました。地域経済と社会の活性化のために、『地域内再投資力』を高めることのできる企業づくりが重要であるとの指摘があり、同友会企業の存在意義や役割を確認するだけにとどまらず、具体的な実践内容の問題提起もあり、とても刺激的な報告でした。

 

参加者の勉強のレベルもかなり高く、それだけにグループ討論の中での気づき、教えられることもたくさんありました。学び、工夫し、果敢に挑戦している体験談は教訓の“かたまり”です。

 

学びが深いと工夫も多様かつ科学性に満ち、その一つひとつに関連があり、それを実行する社員が経営理念に納得して、日常化しているからだと思いました。

 

11月18日・19日に愛媛で開催する「人を生かす経営全国交流会」のPRも四国四県の参加者が一緒に壇上に上がり、全国の仲間に参加を呼びかけていただきました。感動と勇気を愛媛でも味わっていただける交流会とするためにも、逆境の情勢に対して気概を持って立ち向かい続けたい。

 

VOL.65

『同友会での学びを実践しましょう』。に共感する会員は多いと思います。しかし、本当に学びを生かし切っているのかというと自戒をこめて疑問です。私たちはもっともっと貪欲になってもいい。そう思う日々です。

 

例会や会合などでは、「メモを克明に取る」「重要なところに印をつける」「自社の課題に落とし込む」「自らの計画に織り込む」など、学びを生かすための工夫や努力が必要でしょう。H氏は二十数年このことを続け着実に変革を遂げています。私の身近にいるⅠさんもそうです。共通しているのは、決めたことは怠らない、そして一途であること。

 

筆者は先日、判断ミスから朝令暮改をしてしまいました。トップは方針・発言に責任を持つということを日々の中で自覚して実践することが基本であることを痛感しました。そのことは、『人を生かす経営』に向けてのまたとない実践でもあります。そして、なによりも同友会における様々な学びや経験は、自社のあり方や自分自身の生き方にしっかりと軸を与えてくれるはずです。

 

さて、本来こんな素晴らしい成長の過程に身を置いている私たちだからこそ、ここで重要な問いかけを一つ。『自分だけ良くなればいいわけ?』まわりを見渡せば、同友会のことを知らずに悩んでいる人たちがいっぱい。たくさんの人が『一緒に学びませんか?』の一言を待っています。梅咲く二月は一歩前に踏み出しましょう!

 

VOL.64

2010年の新春をいかがお迎えでしょうか。昨年末から年始にかけて“二番底”も懸念されている中で『今年こそは!』の強い思いで経営の構想を練っておられる方が大半でしょう。同友会運動も大きな夢の実現に向けて前進を続ける年としたいものです。

 

同友会では多くの気づきや学びがあります。これを聞き流してしまわずに自分のものにする人は、良いと思ったことをとことん自分で実践しています。一つ一つ確実に自分のモノとして血肉化してしまうまで執念を持ってやり抜いています。そういう人の姿勢を見て、まわりの人も目標を達成しなければと努力するものです。組織の発展も衰退も学んだことを実践する人がたくさん組織にいることが“鍵”と言われる所以で。

 

人も企業も同友会も、組織と言われるものは絶えず成長して行きたいものです。『これでいい』と思った瞬間に、人も企業も成長が止まってしまうのです。そのためには常に明確な目標をもって生きる事が大切です。

 

将来の不安と不満が錯綜するような世相にあって人々の心理も揺れます。常に理念を基本に『何のために』と物事の目的に立ち返って共に考える事が大切です。人々の迷いを確信に変える事ができる元気な企業や同友会をつくる年としてまいりましょう。

 

VOL.63

早いもので、本年も残すところ一か月となりました。この一年はどのような年でしたか。あらゆる情報が頻繁に飛び交った一年だったように思います。

 

そこで問われているのは、正しい情報か、偽物の情報かを見分ける能力です。人は情報を自分に都合よく使う傾向が大きい事を心して、経営者としては、多くの情報や報告の中から自分にとって悪い情報を謙虚に受け止める姿勢が大切です。

 

社員がイキイキ働く会社、風通しの良い会社づくりを目指し、『社員と情報を共有しています』という会員企業も多くなりました。そこで確認すべきことは、経営理念が確立されて社員に共有され、経営者も社員も同じ目的、方向性で活動しているかです。

 

そうでなければ、情報を自分に都合よく解釈して行動し、会社にマイナス効果をもたらすこともあります。同友会で鍛えられた会員企業の素晴らしさは、経営者の資質向上と経営理念の大切さを押さえていることです。

 

規模は小さくとも、地域経済になくてはならない企業としての自負をもって、経営に取り組みたいものです。この一年を締めくくる月として今一度、何のために経営しているか自らに問うてみてはいかがですか。『金で買えないものはない』などと、うそぶくことのなきよう心して。

 

VOL.62

10月から愛媛大学法文学部において3年目を迎えた愛媛同友会提供講座が始まりました。今期の提供講座のテーマは「現代中小企業論~あなたが創る中小企業の時代~」です。中小企業と若者(学生)の関係を中小企業発展の原動力を学ぶ内容です。昨年から学生を取り巻く雇用環境は厳しさを増すばかりです。中小企業が若者と共に企業を創造できるか、両者が生きる上での『鍵』となる内容です。

 

愛媛大学との提供講座は、インターンシップ(チャレンジジョブ)活動や景況調査(EDOR)活動、企業変革支援プログラム活動等々を通して「人材育成」「企業育成」「地域振興」をテーマに産学連携で学び合い、相互の理解を深めてきたことが基盤にあります。連携を通して『若者や中小企業』の教育力を高めることが主旨です。

 

講座は、同友会会員である中小企業の実態を学びながら、同友会の持ち味であるグループ討論も活用しています。司会などの運営準備は会員や学生による手作りを目指しています。

 

生きた経済や経営を学ぶことで日本経済の仕組と、中小企業の全体像(歴史、魅力、役割、強み、弱み)が理解でき、働く意味と展望を学生がもってもらえればしめたもの。若者が中小企業の未来をつくる主人公であることを理解してもらえれば最高です。講座には、会員や社員も参加いただけます。『若者と共に中小企業の時代づくり』を学びませんか。

 

VOL.61

衆議院選挙も8月末に終わり、民主党の大躍進で政権交代、そして政界の新勢力地図が確定しました。

 

9月は、多忙な日が続き静かに考える時間がなかったことにふと気づきました。トップの立場にある人は二十四時間稼働であり、走りながら考える事も必要な能力ですが、ふと立ち止まり、もう一つ深く考える事も求められているのではないでしょうか。多様なことから一つを生み、一つの事実から多様なヒントを得るのは熟慮の所産です。

 

今月からは中予の各支部で単独支部例会が始まりました。仲間づくり運動を具体化した例会づくりは愛媛同友会に着実に定着してきました。例会に参加する事も立ち止まりの機会ですが、その学びをひとりでじっと深める二段目の立ち止まりが、より大きな成果を生むのではないでしょうか。学びを実践につなぐためには自社用に加工が欠かせません。

 

形だけ真似て済むなら、ハウツウ物を読むほうが早いし失敗する人はいません。そうはいかないから本質をつかめと言われるのでしょう。忙しいと自らに言い訳して、学びと思索に集中する時間を省略する自分を反省することしきりです。十月は、読書を通して人生の思索にふける秋としたい

 

VOL.60

青空が広がる8月15日に、愛媛県戦没者追悼式に参列しました。戦争の痛ましさ、歴史への責任と生きる事の重みを感じました。同時に、リーダーのあり方を考える一日となりました。

 

自己体験だけを唯一の価値観やモノサシにして、しかも他人に押しつけたり、既得権に居座り、進歩のないのがボス。ワンマンとは権力で組織を私物化する人間のこと。間断なく学び、自己革新を続けているのがリーダー。では、リーダーシップとは何か。

 

柱は自主性です。まず、だれもが自由に発言できる社風の確立があってこそ、自主性をはぐくむ土壌があると言えますが、その社風づくりの決め手は経営者の強い意志と実行力です。自主性を大切にすることで、時には経営者は言いたいことも言わないで我慢することと誤解している人もいます。言うべきことは言わねばなりません。ただ、言うべき内容か、場か、自己吟味が鍵になります。

 

自主性を柱に、組織を動かすのに納得と合意と信頼を重んじ、かつ、結果についてのリーダー責任を明確にして、炎のような情熱をもってその思いを継続発揮することを、真のリーダーシップの発揮というのではないでしょうか。今、経営者に求められているのは、真のリーダーシップの発揮です。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」の言葉をはんすうした暑い夏の一日でした。

 

VOL.59

山開きから一か月が経ちました。先日、同友会会員の秀野さんから「剱岳 点の記」はぜひ観た方がいいよ、と薦められ、早速観てきました。

 

立山連峰の剱岳が舞台の映画です。軍の命令で地図の空白を埋める陸軍陸地測量部の柴崎芳太郎。彼を助ける案内人の宇治長次郎。日本山岳会を率いる登山家、小島烏水。彼らは過酷な自然と向き合い、ただ一点、未踏の剱山頂をめざします。

 

彼らは、それぞれに答えを探し、あるいは確かめているようです。柴崎は考えます。「なぜ地図をつくるのか?」。彼は、地図をつくるのは国家のためではなく、そこに生活する人間のため、と悟ります。

 

小島は、「なぜ山への登るのか?」。新田次郎の原作小説が史実に沿って描いているように、小島は当時、剱岳に行っていません。映画は、あえて彼らに登らせ、“一番乗りを果たせ”と柴崎に命じる軍の思惑を超えた、山の仲間同士の友情や尊敬を際立たせます。

 

「なにをしたかではなく、なんのためにそれをなしとげたかが大事だ。悔いなくやることが大切だと思います」。映画の中の言葉です。謙虚な人間たちの不屈の魂。息をのむほど美しい自然ともども、すがすがしい。そういえば、先日参加した第41回全国総会でも、不屈の精神で企業経営と同友会運動を不離一体として進めてきた人間の実践に共通していると、ふと思いました。そして、騒がしくて浮ついた現代の世相と大違いではないか、とも。

 

VOL.58

時にはふだん関わりのない人たちの議論を聞くのも、自分の感覚の確認などいろいろな意味で学びになります。ひょんなことから、そんな場面を体験しました。30歳そこそこから六十代初めのビジネスマンや自由業などの人たちとの会食。部下の教育に始まり、小中学生の学力低下問題、そして「ゆとり教育」へと話題は移りました。

 

偶然そうなったのか分からませんが、ゆとり教育批判オンリーでした。いわく、鉄は熱いうちに打て論から、自己体験論、今までも子どもの時間にゆとりがなかったのが疑問など。子どもはもっと勉強したがっている等もでてきます。要は家庭内での知的好奇心の育て方、知ること学ぶことの楽しさを体得させていない学校教育など形でないものの大切さなど、談論風発久しぶりに縦横な議論の中に身を置きました。

 

実はその中でまったく別の事を考えていました。現場を歩かず、現物を観察しない経営者がいたとしたら、その経営者が出す方針は“机上の空論”なのだろうと。かつて、“どぶ板政治家”という表現があったことを思い出しました。生活者の実態を肌身で知っている政治家ということです。実態についての受信を磨く経営活動が今ほど求められていると実感すると同時に、私自身への戒めとしたひと時でした。

 

VOL.57

日々の仕事の中で、選択に迷ったり壁にぶつかった時など、ふと思い浮かんだ諺からヒントを得たり、自信を持てたりすることがあります。ただ逆の意味の諺も結構多く、落ち込んだり、理屈っぽくなっている時などはまずそこに引っかかり、言葉の吟味だけで終わる時もあります。

 

猪突猛進でわが道を行くことが成功への唯いつの道である場合もありますが、こと『人育て』に関する限り、急がば回れの考え方が正解だと実感しています。ここで留意しなくてはならないのは『回れ』の意味です。語意どおり遠い道とか、時間がかかるなどと受け止める人がいます。だからこの厳しい時代にとか、急場にはそれどころではないという結論を短絡的に出し、“アメとムチ”の考え方に身を任せたりもします。

 

『回れ』とは、こちらの姿勢のありようを示しています。私の身近な人の中にも、とことん悩みながら人間としてのあり方に目覚めていく人もいます。その一方では、“アメとムチ”の連続作用で、『人育て』を短絡的にしか考えられなくなった人たちにも出会ってきました。『人が育つ』とは、曲がりくねった道を本人が人との愛情のある関わりを通して自らに気づく道程だと思うのです。同友会も急がば回れの精神を発揮して共に学び合う仲間をたくさん増やしたいと思う今日です。

 

VOL.56

春本番を迎えた4月23日、愛媛同友会の第25回総会が開かれました。一年間の成果や「今こそ、未来を切り拓こう!~変革・連携~」の2009年度スローガンを含め今年度の方針をみんなで決めた大切な総会でした。

 

都市と地方、大企業と中小零細企業、また同業者や業種間の価格競争そして格差問題は深刻度を増しています。付加価値の創造やどこを見て戦略を立てるかが企業の浮沈を左右しています。

 

自社の経営課題を常に意識して具体的な手を打ち、いち早く次の変化に対応するには、異業種の経営者から学ぶことが効果的だということは総会に参加された皆さんの声でした。

 

その場所を提供するのが同友会だとあらためて実感しました。自社や同友会の理念と照らし合わせて自分の行動は間違っていないか、チェックが必要です。そのためにも企業変革支援プログラムの活用をお勧めします。

 

現在の企業の成果は一年前、三年前、いや五年前にまいた種から発生しています。商品も人も顧客も一朝一夕にはできません。特に中小企業の宝である『人』育てには時間が必要です。どのような手を打っているか。目の前の収穫ばかりに気を取られていないか。一度春の夜に熟考してはいかがでしょうか。

 

VOL.55

世界的に金融恐慌が実体経済へ波及し、日本も百年に一度という経済危機を迎えています。会員企業においても全ての業種で、崖から突き落とされる状態で危機が広がっています。会内では、五割以上の大幅な受注減や今後そのような状況が予想される企業も少なくありません。多くの会員が『予測不可能』との言葉を発します。

 

愛媛同友会では地域経済の実態を把握して経営政策、行政政策に反映させる基礎データづくりとして六年前から愛媛大学と共同で景況調査(名称・EDOR)を四半期ごとに実施しており、今回で二十四回を迎えています。

 

マクロの経済とミクロの経済は大いに異なります。要は、グローバル戦略に基づき世界を市場とする大企業の業績も、日本国内のある地域を限定して経営を営む中小企業の業績も、一緒にして統計上で処理されたマクロ指標だけを見ていては本質を見抜けない事です。

 

そこで中同協の景況調査(名称・DOR)やEDORが重要になってきます。この調査こそが同友会会員の実態を反映しているものです。まだ回答数は半数前後ですが、傾向値をつかむには重要な指標です。ぜひとも経営の科学性を重視する会員の基礎資料として活用いただきたいし、アンケート調査にも積極的に回答してもらい、今後の情勢の『予測』がつかめる道具として育てていきたいものです。

 

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