同友会ニュース

2017年2月28日

2017年景況調査座談会【ダイジェスト版】


テーマ「2017年日本経済・中小企業経営環境をどうみるか ~景況調査をどう経営に生かすか~」

 DORDoyu Research/同友会景況調査)が1990年に開始し、全国の同友会でも広がりEDOREhime Doyu Research)は2003年に開始して15年目です。今回は長く愛媛同友会でも報告者を務められた中平智之さんが栄転による退任もあり、景況調査座談会を行いました。曽我先生、桑波田委員長からもお話いただき、また米田さんよりEDORへの問題提起にも踏み込むなど、今後の課題も深めることができました。

日時:2017年2月6日(月)
会場:愛媛大学城北キャンパス・総合研究棟2

■登壇者(敬称略)
中平 智之   中小企業家同友会全国協議会 企業環境研究センター担当主任事務局員
曽我 亘由   愛媛大学社会共創学部 教授/景況調査(EDOR)キャップ
桑波田 健  愛媛県中小企業家同友会 EDOR委員会 委員長
米田 順哉  愛媛県中小企業家同友会 副専務理事

■司会進行・インタビュアー  愛媛県中小企業家同友会 事務局 安丸雄介

※詳細は記事末尾の当日の配布資料をご覧ください。



 
<景況調査3つの意義と課題>

冒頭、中平さんより景況調査の3つの意義―(1)会員の回答が各期の経営活動の自己点検の契機となること、(2)同友会と会員が景気動向の鋭敏な感覚を磨くこと、(3)経営者団体として情報発信の責務を果たすこと、が説明されました。これらは経営者が自社の経営を総括して社員と共有できるレベルへと高め、同友会調査が対外的に示せるまで高めるプロセスでもあります。また、経営指針成文化に関わるオプション調査を紹介され、経営指針づくりで49.7%の経営者が「人材育成につながった」と回答。次いで「顧客ニーズに対応した企画力・営業力が育った」、「取引先や関係者からの評価が高まった」ことが30%近くにのぼります。「根本は人が育っているからこそ」実績が上がっていると中平さんは強調しました。

 曽我先生からはEDOR調査の課題として、経営者が売上や経常利益などの計数を理解しながら帳簿を見合わせての検討が必要だがその検証されていないこと、また分かりやすく活用しやすい報告書へ仕上げていく工夫が挙げられました。

 

 桑波田さんはEDORについて「統計データは専門家の曽我先生が整備しますが、その調査資料が提供できるのは中小企業家であり、経営実践そのものだということに意義を感じています。EDORを企業づくりへつなげ、よい経営者になる、これはすべて地域貢献だと思う」と語ります。今後の課題には調査母数(現在120130件程度)を増やして業種別など様々な角度から分析できるように実態をより正確に映す情報へ精度を上げていくこと、また情報の鮮度を重視して集計・検討・公表にスピードをもって利用価値を高めることが述べられました。また、桑波田さんは例会報告のために、過去の一連のEDOR資料を使って、自社と取り巻く環境の変化を見返したそうです。「EDORは“資料”になる。EDORによる振り返りは自社の歴史の歩みの振り返りそのものだった」と語り、ご自身の活用方法を紹介しました。 
 

<中小企業の経営環境は?>

続けて中平さん、曽我先生から直近の1012月期の景況調査の特徴を紹介。現場経営者の立場から桑波田さんは印刷業界が全国的に景気回復に貢献できていない現状に触れ、「肌感覚として印刷業界の景況は自社ではそれほど悪くない。ピーク時には印刷会社が相当淘汰されたが、これからは飛躍と発展に取り組む時期だ」と振り返りました(詳しくは記事末尾の報告書を参照)。

最後に2017年の景況をどう見るかフリーディスカッションしました。曽我先生は米国をはじめEUの保護主義的な動きに対する懸念を表明。日本国内はオリンピック景況までは堅調に推移する見通しも感触としてありながらも、長期的に人口の自然減少が重大な問題であり採用課題を抱える中小企業の経営環境としては付加価値増加や社員教育、AI(人工知能)による対応の課題が浮上してくることを指摘しました。

中平さんからは2017年の世界経済について中同協企業環境センターの分析内容を報告。社会民主主義の政治が強かったEUにおいて新自由主義が並存して経済格差問題を起こし、移民問題等が重なりナショナリズムが刺激された問題が起きていること、中国のゆくえは米国からの敵視政策・TPP放棄により代替する東アジア構想があるのかが問題になっていると指摘されました。 

さらに、米田さんからはEDORの問題意識について多数の意見が述べられ、新たに資金繰りDIと仕入単価DIを調査項目に盛り込むことなど改善点の意見交換がされました。中平さんからも、以前のDORの特徴でもあった自由記述が各業種の中小企業家の生の声が聞かれ日銀に「対抗」しうる迫力があったと意見され、経営者の間で愛読されていたことから今後の参考にして調査票を工夫してみてはどうかとの意見が出されました。
 EDORの意義・特徴だけでなく今後の課題についても深められた良い座談会となりました。

愛媛県中小企業家同友会事務局 安丸雄介


↓詳しくは下記、当日の配布資料4点をご覧ください!
http://www.doyu.jp/research/dor/2016/dor_118.pdf
(第118回 同友会景況調査報告(DOR)2016.10-12月期)
 

▲中同協のレポート・分析を語る中平智之さん

 

▲愛媛の現状について語っていただいた曽我亘由さん

 

▲EDOR調査について問題提起していただいた米田順哉さん

 

▲経営者の立場からお話いただいた桑波田健さん

 

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