自社や同友会全体が良くなるためにはどうしたらいいのかを考えることが重要

服部 豊正氏

<服部 豊正・プロフィール>
1940年生まれ。服部製紙株式会社 代表取締役会長。愛媛県中小企業家同友会 代表理事。
1986年の川之江・伊予三島支部(現在:四国中央支部)設立準備から参画。1987年に初代の川之江・伊予三島支部長に就任、その後1999年に四代目愛媛同友会代表理事並びに中小企業家同友会全国協議会常任幹事に就任し現在に至ります。
服部氏の直向で積極的な学ぶ姿勢と公正な人柄は、愛媛同友会の会風の礎となっています。服部氏の会員としての歩みはまさに“企業経営と同友会運動”を不離一体として実践しています。

―入会のきっかけ

ある時、とてもショックな出来事がありました。後々中心になって働いてほしいと思っていた社員の方が「辞めさせてほしい」と言ってきたことです。その社員の方を引き留めるために、半日以上マンツーマンで話をしたのですが、最後に「専務(当時の服部さんのお兄さん)の方針にはついていけない」と言われました。当時兄が時期社長でしたので止めようがなくなりました。その時、このままではいけないと思いました。何か改善を加えていかなければいけないと考えていたとき、愛媛同友会の川之江・伊予三島支部(現在の四国中央支部)設立準備会例会に誘われました。報告者は香川同友会の三宅昭二さんでした。三宅さんのお話はインパクトがあり、自分が目指している会社がそこにあるように感じました。そして同友会の勉強をしてみようかと思いました。

―同友会で学んだこと、経営に生きていること

まず影響を受けたのは北海道の大久保尚孝社員教育委員長でした。大久保さんには北海道から川之江・伊予三島支部に何度も来ていただいています。あの方の軽妙な語りかけは今でも耳に残っています。当時中同協の幹事長だった赤石義博さんの発言や独特なものの考え方が印象に残っています。以後、同友会の考え方がものの考え方の基本の中に入っていったような気がします。

 

全国大会に参加し、いろんな方の話を聞かせていただきました。しかし、たくさんの方の話を聞いても自分の企業に生かしきれていませんでした。今でもまだまだ生かしきれていないことがあると思っています。でも、人間はものの考え方、社員との接し方一つ捉えてみてでも、「この経営者はどういう気持ちで社員と接してくれているのか」が社員には伝わります。これが背中で引っ張っていくということだと思いました。また言葉だけでなく言動や行いで社員も感じるところがあるのではないかと思います。そんな中で何を一番学んだのかというと、基本は社員との関わりです。社員とどのように接していったらいいのかが基本になっていると思います。

―会社経営での失敗や成功

失敗はたくさんありました。大失敗もあります。私は経営指針成文化セミナーにも5回ほど参加してみましたが、なかなか発表できませんでした。感じたことは、社長だけが学びに出て、それを会社に広めていくというスタンスではダメだということです。いかに社員を巻き込み、社員と共に参加し、学び、そのうえでどうするかを考えていくことが大事なのだと一つ反省としてあります。アイネット株式会社では最初からこのようにしていこうということで、社員何人かで一緒に勉強していくことにしています。

 

アイネット株式会社で、一事務員から役員会でアイネットの話をしているときに「社長、アイネットの役員のみなさんは、アイネットのことをどのように考えているのですか」という声があがりました。なぜこのような発言があったのかというと、社員にとっては自分が働いている会社が全てです。この会社に就職しているのですから。しかし、アイネット株式会社の役員のみなさんは自分の会社を持っています。アイネットは自社の次になってしまっているわけです。そういった状態は、社員にはよくわかるのです。私はこの言葉を聞いてドキッとしました。当人になって感じてみると、本当にアイネットのためを思って出てきた言葉かがよくわかるのです。これは本当に経営者が考えなければならない大きな要素の一つだと思います。
―同友会への期待

愛媛同友会・同友会という会は、経営者にとってはバイブルです。言っている言葉、やっていること一つ一つ捉えていっても、今の若い経営者の方がしっかり学び、そして立派な経営をしてほしいと思います。学んでいけばできると思っていますし、若い方が愛媛同友会が培ってきたものを継承していってくれたら、その会社自身が良くなっていきますし、いろんなことができるようにもなっていきます。厳しい時代だからこそ、このようにしていただきたいです。もう一つは、自社だけが良くなるように考えるのではなく、自社や同友会全体のみなさんが良くなるためにはどうしたらいいのかを考えることが、みなさんが一生懸命協力して盛り上げていこうという機運が生まれてくる一つの素地になるのではないかなと思います。

インタビュアー・文責:伊井 達哉(愛媛同友会 事務局員)

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