同友会ニュース

2015年12月10日

第11回四国地方連携交流会で「人を生かす経営」を学び合う


四国四県の会員と事務局員36名が学び、交流
  11月16日(月)、ホテルグランフォーレ(四国中央市)において、第11回四国地方連携交流会を開催しました。四国の同友会(香川、徳島、高知、愛媛)の主催で年に1回、4県が持ち回りで設営しています。
 第11回目となる今回は愛媛同友会の設営で、「『人を生かす経営』の企業経営と同友会の実践について」とのテーマで、各同友会の取り組みを交流するパネルディスカッションを行いました。パネリストは、香川同友会理事 共同求人委員長の三宅慎二さん、徳島同友会理事 人を生かす経営塾長の小田大輔さん、高知同友会代表理事の成岡英司さん、愛媛同友会副代表理事(企業づくり本部長)の伊藤俊一郎さん。座長は愛媛同友会専務理事の鎌田哲雄さん、室長は愛媛同友会副専務理事の米田順哉さんが担当しました。
 
<香川同友会:三宅慎二さんの報告>
 三宅さんからは先ず、自社の実践について報告がありました。
1.合同企業説明会に参加してもブースに学生が来ないという現実に直面する中、武器になったのが経営指針。経営指針を打ち出し、学生に語ることで新卒採用に繋がった。
2.採用によって得られた教訓は「採用のフレームワークを広げる」ということと「採用基準を広げる」ということ。新卒の社員が入社することで、既存社員が張り切り、社内が活気づいたことも利点。
3.社員の育成に大切なのは、「インフォーマルな話ができる関係」「適所適材」「資格取得を推奨する学習型企業」「経営者の率先垂範」。資格取得については三宅さんが率先して挑戦し、多い人では20以上の資格を取得している。
 
 続いて香川同友会の取り組みとして、年に1度開催している「人を生かす経営」4委員会の合同例会について報告がありました。2014年度から各委員会の持ち回りで役割分担をしながら実践しており、委員会の枠を超えた学びの場として機能し始めているとのこと。2016年度からは年に2回に増やして開催していくとの報告でした。
 
<徳島同友会:小田大輔さんの報告>
 小田さんの報告は一言でいうと、経営指針実践によりブラック企業からホワイト企業への転換を図る取り組みの報告でした。
 かつては場当たり的(対処療法的)な経営で、採用についても「誰かが辞めたら、誰かを雇う」という姿勢だった小田さん。同友会で学び、経営を根本的に見直すために、経営指針を成文化しました。そのことで、「どのように経営すればよいのか」から「何のために経営するのか」へ変化。さらに経営指針を実践していく中で「会社を社長一人で回していくことはできない」と実感し、「社員と共に会社をつくる。社員一人一人が会社」という考えに至りました。
 
 徳島同友会では「人を生かす経営塾」を開講しています。塾長である小田さんの反省点として、「経営者と社員が共に学ぶ時間を大切にする」「社員のプレゼンテーション力向上に繋がるものにする」といった点を挙げ、「徳島同友会の人を生かす経営塾を、経営者が社員と共に学び、社員に光を当てるため、社員をいかに巻き込む仕組みを作るか学べる塾へと発展させていきたい」と報告。さらには、経営フォーラムや中小企業振興基本条例に「人を生かす経営を生かす」ことに着手しているとの報告がありました。
 
<高知同友会:成岡英司さんの報告>
 成岡さんからは「掟破りの報告になりますが」との前置きがあり、高知同友会の30年の教訓について報告がありました。
1.会員に寄り添う、会員の声を聞くには経営指針が決め手。2014年度に愛媛同友会の経営指針成文化セミナーに参加し、「社員と共に学ぶ」ことの大切さを改めて実感した。社員は経営指針を実現するパートナーである。
2.上記の経験を踏まえ、高知同友会の経営指針成文化プログラムを確立できた。
3.企業経営だけでなく、運動体として高知同友会の組織や活動を再構築する。
4.入口は経営指針。運動を通して、出口はどうなるのかということを考えており、共同求人に着手したい。各地同友会の良いところを学び、後進地域の利点を発揮して「高知同友会の共同求人」をつくっていきたい。
 
 続いて自社における実践報告。耐震偽装事件、年金問題、悪徳リフォーム事件、リーマンショックという度重なる外部要因で4期連続の赤字が続く中、あきらめずに乗り越えられたのは、同友会で学んで経営指針を成文化し、社員と共に実践していたからでした。現在では4期連続の黒字経営となっています。昨年度に自社の中期ビジョンを作ったことも、経営者としての自信に繋がっているとのこと。現在は来年度の新卒採用を目指して、インターンシップに挑戦しているとの報告でした。
 
<愛媛同友会:伊藤俊一郎さんの報告>
 伊藤さんの報告は、経営者になって同友会に入会して12年間、何を学んできたのかについての振り返りから始まりました。「働くことは喜びであり、その対極にあるのは働くことができない苦しみや、社会からアテにされない恐怖」であるとの実感から、「会社を潰して社員を苦しませることがないようにするのが、経営者の責任」と伊藤さん。この考え方が、自社の経営指針に色濃く反映されているとのことでした。
 
 続いて、愛媛同友会の「人を生かす経営」のフレームワークについて説明。
1.愛媛同友会の「人を生かす経営」の定義「『労使見解』の精神を生かした経営指針を確立し、社員教育を進め、障がいのあるなしに関わらず、求人を行う経営」の説明。
2.「人を生かす経営」の各プログラムへの参加者数が過去最高になっている。企業の「人を生かす経営」への要求が高まっていることを感じる。
3.東京オリンピックまでは大企業を中心に採用要求が高いため、中小企業が採用から、教育に重点を置いて定着率を高める必要がある。
 
 自社の取り組みついては、イトマン(株)の人事教育プログラムを示しながら報告しました。
1.人事教育理念を確立している。実現するために、採用・評価・共育がある。
2.良い会社をつくるために自社の理念に共感する人を採用する。採用のために仕事をつくるという姿勢。「地域を守る」とは雇用を生み出していくこと、利益を上げて納税することであり、社員の仕事は「仕事をつくることと」と「顧客をつくること」。
3.採用は優劣ではなく、マッチングを重視する。自社では「人の役に立つことに喜びを見出す人」という基準を明確にしている。
4.職場で仲間をつくるという社内風土づくり。お客さんにも喜んでもらう風土をつくる。
5.10月5日付の日本経済新聞に、人を生かす会社のランキングが掲載されていた。社員1,000名以上の上場企業が中心のランキングだが同友会が目指す企業の見本になるのではないか。ダイバーシティ経営などの取り組みが「人を生かす経営」の尺度になると感じた。
 
 4人の報告を受けて5グループに分かれてグループ討論を行いました。
 
<座長:鎌田哲雄さんのまとめ>
 最後に座長の鎌田さんから、4人の報告とグループ討論を受けてのまとめがありました。
1.企業経営への提起
(1)先月の第18回障害者問題全国交流会in愛媛の第2日目、中同協障害者問題委員長の内田五郎さんによる行動提起において、障害者雇用を経営指針に位置づけることが提起された。障害のあるなしに関わらず、働きたいと思う人を採用する会社を目指す。
(2)定着と働き甲斐を実感できる教育が必要であり、そのことを保証するための経営指針を確立する。経営指針が「人を生かす経営」の背骨であり、有用な経営指針とは、障害者の採用や就労支援、求人計画を要求項目に入れているもの。
 
2.同友会運動への提起
(1)共同求人や運動が進まないのは経営指針の中に、要求項目として入っていないから。今後は、要求項目をしっかりと位置付ける。
(2)経営指針づくりを「人を生かす経営」の要求項目に沿って見直し、改善すること。見直し、改善する項目にはエネルギーシフトも視野に入れること。中同協の運動方針の全面実践という観点が必要です。
 
3.四国地方連携交流会への提起
  四国地方連携交流会の入口は「人を生かす経営」であり、出口は「憧れの存在」をたくさんつくること。この四国地方連携交流会を、「人を生かす経営」の聖地にしましょう。四国を「人を生かす経営」と同友会運動が最も活発な地域とする。相互に情報発信し交流する連携を行う。
  そのためには、四国地方連携交流会のあり方について、会員の要求と時代の変化に対応し、再編を行うこと。
 
 
 続いて、(1)「人を生かす経営」を企業にどう取り入れていくのか?、(2)「人を生かす経営」を企業で普及するには、同友会の組み立てと活動をどうすればよいか?、(3)「人を生かす経営」を四国の同友会で連携する課題や要望−のテーマでグループ討論を行いました。
 
 懇親パーティーでは、来年2月に香川同友会が担当して開催する、第46回中小企業問題全国研究集会in香川のPR、並びに徳島・高知・愛媛の参加者が壇上に上がり、同友会運動にかける決意を表明して大いに盛り上がりました。
 閉会挨拶は徳島同友会代表理事の山城真一さんから「四国四県の同友会がさらなる運動を進めるための在り方を研究し、行動する時期が来ており、連携を深めてまいりましょう」との中締めを行いました。
 四国四県同友会の連帯の高さを実感する交流会となりました。
 次回は徳島同友会が担当して開催します。

▲室長の米田順哉さん

 

▲座長の鎌田哲雄さん

 

▲三宅慎二さん

 

▲小田大輔さん

 

▲成岡英司さん

 

▲伊藤俊一郎さん

 

▲グループ討論

 

▲懇親パーティー

 

▲山城真一さんからの閉会挨拶

 

▲参加者全員で一本締め

 

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